浄土真宗大谷派本山である東本願寺の阿弥陀堂改修工事に参加いたしておりました。
我々の職人グループは、若林仏具店様の発注のもとに集まった少数精鋭なグループです。
京都の漆塗り職人の中でも、優れた技術と、豊富な現場作業経験を持つ柿氏を中心に、 牧野漆工、大家氏、など、高い技術を持つメンバーで構成された我々チームは お内陣の外陣正面を含む主要箇所を漆塗り修復いたしました。
工事全体では、他企業を含むJVの構成とし、約一年半の工期で漆塗りの作業を完成させました。
一年半という長い工期の中で仲間同士、ノウハウや知識を共有し、互いに成長できた貴重な経験となりました。
今回の経験を生かし、皆様のお役に立つ事をお約束いたします
二条城東大手門は、漆塗りの金具で覆われています。
現状は漆が紫外線により劣化し、ほとんどが消失していました。
金具は取り外せないので、現場にて漆塗りの作業をおこないました。
【作業前】 |
【作業後】 |
金具の間は木地を汚さないように、丁寧に養生しました。
東大手門の足元にはお堀があります。
湿度が常に高いので、漆塗りの作業にとっては難易度が高い塗り作業になります。
常に、紫外線が多く当たりますので、紫外線に強い漆を厳選し、なおかつ松煙をねりこみました。
黒い漆が長持ちしてくれればうれしいのですが。
劣化により、漆は無くなり、金箔もはがれおちてしまっています。
木地も風雨により、ボコボコになってしまっていました。
【下地】 |
【漆塗り】 |
地板は拭き漆仕上げ。文字や縁取りの盛り上げは金箔しあげいたします。
ボコボコの木地を修復するには、分厚い下地をほどこさないと綺麗になりません。
下地は総堅地にて
【修復前】 |
【パーツに仕分け】 |
仙台のおみせからの依頼です。
6 尺の前机を新品同様の仕上げで修復いたします。
塗りは総塗り替え、彩色は剥落止めを行い、補彩、金箔は新しく押し替えました。
京都の金箔加工は、他産地とことなり、光沢を抑えた仕上げを施します。
上品な金箔の発色に、お店のスタッフさんも施主様もお喜びいただけました。
【納品】
約 120 人工 60 日工期 地長押 蠟色仕上げ
壇框 黒立て塗り
その他金箔仕上げ
大崎上島のお寺にて。 潮風の影響かな。 劣化が激しく、柱などはひび割れがすごかったですね。 柱 黒立塗り仕上げ 長押し 金箔仕上げ 地長押し 蝋色仕上げ |
本間、両余間ふくめて約 600 坪(50 m²) 応援で御邪魔しました。
工期約 100 日 総人工 約 200 人の漆塗り工事です。 地長押し 蝋色仕上げ。 その他 金箔仕上げ。 |
床の拭き漆 約 250 坪(20 m²) 新調された檜材を 弁柄で赤い目に着色した拭き漆 工期 10日 人工 20人 |
皮を取ったアウトラインが自然で美しい。 西日が当たりますので、若干、松煙で黒い目に着色してあります。 文字の黒漆にも松煙を練り込みました。
綺麗な状態が続くと嬉しいです。
漆の持つ魅力といえば透きとおるような艶、もっちりした肌触りなどが挙げられます。
加工のし易さなどから蒔絵や沈金、金箔などの芸を凝らした工芸品も数多く生産され、
高級感や上品さを演出できるところから高級な工芸品とされています。
【工事初旬の様子】
現場の養生だけでも 2 週間かかりましたね。 大勢で足場を組んだり畳を上げたりで、慌ただしく時間が過ぎていました。
【漆塗り下地段階】
【漆塗り完成状態】
漆塗りの工程だけで、約 2 ヶ月かかりました。
塗り坪が約 500 坪。
ほとんどの作業を下地についやします。本堅地での下地は伝統的な工法で作業します。 道具も全て手作りです。
木で作る木ベラは現場の部材の寸法にあわせて現場で製作します。丸い柱は丸にあわせて作ったりです。
下地の硬さも作業工程ごとに変えて行き、仕上げに近づくほどに、細かい粒子に変えていきます。
伴って木ベラの硬さ加減もかえていきます。い〜っぱいの道具をその都度つくるのよ!
良い仕事のためにはいい道具作りが大切です。道具を作るにも技術が必要!
京都から技術力の高い同業の職人仲間が応援に駆けつけてくれました。
助かったよ~(笑)
【金箔施工後】
漆塗りのあとは金箔の職人が10日間で施工してくれました。
この時、12月。
寒い環境の中、漆の調子を合わせて綺麗に乾かしてくれました。
漆は湿度と温度が高くないと乾かないんですね。
特に金箔を接着させる漆は乾きにくいんです。
失敗すると不乾なんてこともありますから冬場の現場は怖いのよ。
柱の中心に合わせて打ち付けた金物は六葉といいます。
釘隠しの意味合いで錺でもありますね。
金箔を施すことで朱塗りした高粱の面を引き立たせて魅せることができます。
また、面の朱塗りが金箔をより荘厳にみせることができます。
金箔や、漆塗りを格好よく魅せるためのテクニックでトータルバランスを考慮してこのプランを採用いたしました。
あらかじめ用意していた彩色の数々。左上は天人。
右上は水鳥ですね。巻下げも格好よく寸法、図柄を合わせています。
下地にはすべて本金の金紙を使用しています。
【完成】
人天蓋は 3 尺 5 寸。余間境には 8 尺の筬欄間を 2 枚並べて施工しました。
馬簾は金襴で。
【筬欄間は面金仕様】
ガラスにサギ(鳥)が突撃(>_<) 大破したガラスでお厨子が傷だらけに。。
解体しての修復は大仕事ですので、現場での修復を選択しました。 新品同様とはいきませんが、ご要望に沿って要領よく仕事いたします。
ビフォー | アフター |
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大谷派の御宮殿は錺金具が多い。
一週間ほどかけて仕立てました。
本願寺派の宮殿の特徴は、金箔をふんだんに使った荘厳な仕上げ。
新品同様の状態への修復です。
金箔を擦らさないように気を配りながらの仕立てをしました。
11尺(約3.3m)の内陣上がり框を総蝋色仕上げです。
写真は漆を塗り重ねる前に、駿河炭で漆塗膜を平滑に磨いているところです。
超上級品の登高座。お寺さんが座る仏具ですね。
仕立て「組み立て」が難しいのよ。
それぞれのパーツは線が細いのに丈夫に組まなあかんしね。座るもんなぁ。
まあ上出来では!
今までしでかしてきた失敗が 自信と実力になってます。
総金箔漆養生仕上げ。
【面朱&手彫り径台】
仕立て作業は延べ 3 週間を要しました。
3 尺 3 寸の京仏壇で本三方開き中逗子入りと最高級のお仏壇です。
本三方とは雨戸と障子共に、扉が 6 枚あって、両脇の奥から扉が開く構造となっています。 大きな仏間に施工することが多く、奥から扉を開けると、5 尺を超えた幅となるため存在感はすばらしい。 しかし、超~仕立てが難しいため、めっちゃ難儀しましたで(笑)
お寺の御内仏としてお使いいただきます。
御宮殿とそれを取り囲むように前机を製作させていただきました。
御宮殿は非常に古いタイプで 4 本の柱で構造されています。
今回は内陣三方壁に施された作家さんの壁画をしっかりと魅せたいので、 宮殿の背板を取り外しました。
前机は壁画に雰囲気を合わせてグリーンの箔を使用いたしました。
正面をかまぼこの様に丸く創り、柔らかい雰囲気を創ると共に、宮殿の前の動線を 広く取れる工夫がしてあります。 宮殿の周りを前と両脇の 3 点の机で囲んでいます。
全て可動式ですので、机の置き方に様々なバリエーションをもたらすことができます。
このことにより、様々な法事のニーズに対応可能です。
六鳥といいまして、腰板の飾りに6種類の鳥を施します。
天板を支える四角には龍の彫刻を施した袖彫りがあり、 色鮮やかに仕上がっています。 ベースには黒い目の朱塗りで。 規則正しく造られた木地と錺金物を打っています。 みんなが綺麗に作ってくれた仕上げを担当しますので ミスは禁物ですね。 緊張感のある仕立てです。 |